- 浅尾 慶一郎
同僚の今井委員に引き続きまして、私は主に積立金の問題について質問をさせていただきます。
まず最初に、巨額な積立金があると言われておりますけれども、これは何のために必要なのかといったようなことについて大臣の御答弁をいただきたいと思います。
過去は、例えば昭和48年、福祉元年と言われたときには、これは積立方式から賦課方式へ移行していくんだということで、ピーク時には1年分程度しかもたないんですよというふうに言っておられたのが、これが今ピークでも3、4年分は持つというようなことになっておりますが、何のためにそういうことをしておるのかということと、そしてまたその部分の説明はどのようにされておるのか、その点を簡単に御答弁いただきたいと思います。
- 丹羽 雄哉氏(国務大臣)
先ほどもちょっと御答弁を申し上げたわけでございますが、厚生年金で高齢化のピークを越えても将来にわたってある程度の積立金を持ち続けておりますのは、積立金の利子収入によりまして給付の一部を賄っておるわけでございます。その結果、保険料の負担を軽減し続ける、こういう趣旨からでございます。
仮に、積立金を持たなければ、積立金による利子収入というものが減ることになるわけでございますので、将来、その分、保険料を上げざるを得ない、こういうことになりますので、私どもは高齢化のピークを越えても4年分程度の積立金を持っていることが必要であると考えておるような次第でございます。
- 浅尾 慶一郎
積立金の利子収入でもって将来負担を減らせられるという御答弁でございますけれども、利子収入を得るためにはいろいろな意味でのリスクがあるわけでございまして、リスクとリターンの関係というものがそこに当然あるのではないかなというふうに思います。
今ありますこの170兆円を超える積立金は、申すまでもありませんけれども、500兆円と言われております日本のGDPの、四割まではいきませんけれども非常に大きな割合であるということでありまして、これだけ巨額な積立金を、今はまだ年金福祉事業団が一部運用しているという状況でございますが、今後これを全額運用していくことになった場合に、リスクとリターンの関係を踏まえて、将来必ず積立金が果たして本当に必要なのか、それがなかった場合に必要とされる額を減らす役割を果たすのか、必ずその積立金が果実を生むのかどうか、その点はお約束ができるのでしょうか。
- 丹羽 雄哉氏(国務大臣)
積立金の推移でございますが、名目額といたしましてはある程度の増加が見られているところでございますけれども、受給者が大変な勢いでふえておるわけでございます。そういうことで、支出に対する割合で見ますと、現在は5.5年分でございますが、今がピークでございまして、将来は、先ほど四年弱というふうに申し上げましたけれども、3.8年ぐらいに次第に低下してくる、こういう見通しになっておるわけでございます。そういう観点から、先ほどから申し上げておりますように、いわゆる不足分を補っていくためにも積立金というものが必要だ、こういう認識に立つものでございます。
いわゆる安全かどうかということでございますけれども、確かにこれは市場に任せるものでございますけれども、私どもはいわゆる債券を中心にしまして安全で確実なものを努力していきたい、このように考えているような次第でございます。
- 浅尾 慶一郎
経済状況が安定的である場合に例えば国債を買っておけば、それはほぼ国の成長率と同じぐらいの利回りで長期的には回るということになるんではないかと思います。例えば50年ぐらいの長いスパンで考えた場合、積立金が2050年ということは今から見れば50年の長いスパンで見ないといけないということになると思いますが、そのときに、その50年間の間に急激なインフレが途中で起きるといったようなことは厚生省として想定はされておりますか。
- 丹羽 雄哉氏(国務大臣)
インフレが起きるとか起きないとかということは、今私がここで軽々に申し上げる段階にはないわけでございますが、あくまでもこれは委員御案内のようにタームが非常に長くなっておるわけでございますので、いわゆる変動はあるわけでございます。
それが証拠に、年福事業団の資金運用でございますが、昭和61年度から始まりまして、バブル崩壊後の大変厳しい金融経済状況の中ではほかの機関投資家と遜色のない運用成績を上げていたわけでございますが、財投への利払いが平成10年度の平均で4.4%ぐらい借り入れがあった、こういうことがございまして、大変全般的に苦しい状況が続きました。
この結果、平成10年度末では時価ベースで1兆2,000億円の累積赤字が生じていたことでございますが、今年度に入りましてから国内株式の収益が好転をいたしまして、赤字も解消に向かっておりますし、平成11年度12月末現在では7,500億円の黒字となっておるわけでございます。
いずれにいたしましても、貴重な年金でございますので安全に、そして確実に年金の支払い給付に役立つように私どもは最大限努力していきたい、このように考えております。
- 浅尾 慶一郎
年金の支払いの給付に役立つようにというのはもちろんそのとおりだと思いますが、私が申し上げたいのは、予想できないようなインフレに50年という長いタームでは襲われる可能性があるのではないか。例えば、過去五十年さかのぼって見てみますと、50年じゃないかもしれませんが、終戦時あるいは終戦後の日本の社会というのは大変なインフレに襲われたわけでありまして、同じようなインフレに仮に50年以内の間に襲われた場合には、この170兆円を超える積立金も当然目減りをしてしまう。ですから、持っていてもその場合においては意味がないということを実は申し上げたかったというのが一点です。この部分を議論してもお答えいただけないかもしれませんが。
そして、第二点でぜひ申し上げたかったのは、ここの部分はお答えいただきたいのですが、先ほど申し上げましたように、今、日本のGDPが500兆円を割るぐらいの規模であります。500兆円を割る規模のときに170兆円を超える積立金をこれから自主運用ということになった場合に、果たして本当に安全で有利な運用というのができるのかどうか。安全で有利だというのは、ある程度規模が小さくないと安全で有利なということはできなくて、余りにも規模が大きくなってしまいますと池の中の鯨になってしまうんじゃないかということを申し上げさせていただきたかったわけでありますが、その点いかがでございましょうか。
- 丹羽 雄哉氏(国務大臣)
今回の年金の積立金の運用は、御案内のように資金運用部への預託から年金資金運用基金による自主運用に改正することになるわけでございます。
この自主運用に当たりましては、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、国内債券を中心としながら、国内株式を一割程度考えております。それから国外株式、これも一割程度かなということであります、などを組み入れることにしておりまして、このような分散の投資を行うことによりまして、長期的に見ればより安全で有利な運用が可能になる、こう考えているような次第でございます。
先ほど委員からお話がございましたけれども、株式は確かに短期的には乱高下があるわけでございます。短期的な売買を繰り返すのではなくて長期、20年、30年といった長期に保有して運用を行いますので、これは日本経済が成長する限り高い収益が上がる、こういうことでございます。
- 浅尾 慶一郎
どうも答弁がかみ合っていないのかなと思います。
私が申し上げているのは、安定的に段階的に世の中が伸びていく限りにおいては多分大臣がおっしゃるとおりなんですが、超インフレというのはショックですから、それは予見できないのではないかということでありまして、それに対しては、多分積立金があっても対応がその場合にはできないのではないかなというふうに思います。
先ほど、池の中の鯨という話をさせていただきましたけれども、別の観点からこのお話をさせていただきます。
予算委員会の審議の中で、堺屋経済企画庁長官が、日本の一つの構造的な問題は過剰な貯蓄にあるというふうに御答弁をされておりまして、大臣はその場に多分おられたのではないかなと思いますけれども、この積立金そのものが実は過剰な貯蓄に当たるのではないかというふうに私は思うわけであります。諸外国の例をとりましても、日本以外は、きょうの午前中の公聴会でもお話がありましたけれども、最高で4年も持っているところはないわけでありまして、そもそも賦課方式であるとするならば、そんなに長い間持つ必要がないということなのではないかなというふうに思います。
何を申し上げたいかといいますと、その予算委員会の審議の中では、日本の方がこれだけ多くの貯蓄を個人で、家庭で持つのは将来に対する不安があるからであるということだったわけでありますけれども、公的年金であります厚生年金が積立方式ということであれば、これははるかに今必要な額に足りないということはもう大臣御存じのとおりでありまして、積立方式をあきらめるということになるとするならば、何のために持つのかというのがいま一つ明らかではない。公的年金そのものが将来に対して不安を持っているから四年間持ってしまっているのじゃないかなというふうに思わざるを得ないわけでありまして、それは逆に言えば合成の誤謬ということにつながるのじゃないかと思いますが、もし御答弁いただけるのでありましたらお答えいただきたい。
- 丹羽 雄哉氏(国務大臣)
委員の予算委員会での堺屋長官との議論を拝聴しておりました。
確かに、日本の貯蓄率は、アメリカが0%と言われるのに対しまして日本は20%と言われておりまして、非常に高いということが消費が伸びない原因であることは十分に私も認識いたしております。
要するに、年金の積み立てというのは将来世代の負担を軽減する、こういう問題でございまして、むしろいわゆる将来に対する不安を解消していかなければならない。つまり、積立金を切り崩すと若い方の将来負担が重くなってくるんだ、ここの兼ね合いでございまして、ちょっと別の次元で考えていただければ幸いだと思っています。
- 浅尾 慶一郎
多分、堺屋さんの答弁は、ここで言ってもしようがないんですけれども、家計が思っているのは、将来に対する不安を個人的にやる。国がやるというのは、国が将来に対する不安のために国が積立金を持つということで、私はそこは同じなのではないかなと思います。
話を変えまして、今度自主運用ということになりますが、果たして本当にその自主運用がうまくいくのかなという観点から質問をさせていただきます。
金融機関の場合は、いろいろな運用をする場合に、最近は特に金融派生商品、デリバティブといったようなものを買うときに、その内部の統制が厳しくなっておると思いますが、簡潔で結構でございますけれども、村井総括政務次官、お答えいただきたいと思います。
- 村井 仁氏(政務次官)
浅尾先生、大変お詳しい御経験をお持ちでいらっしゃいますけれども、金融機関におけるリスク管理のありようというのは決して一様ではございませんで、それぞれいろいろな方針を持ってやっているのは御案内のとおりでございます。
そういう意味で、私どもとして現在やっておりますのは、いわば一種の内部管理あるいは自己責任の徹底ということでございまして、そのプロセスをチェックするというところに重点を置いてチェックをしておる、これが金融監督庁の立場でございます。
申しわけございませんが、もう少し申し上げさせていただきますと、債務者の信用リスクや市場リスク等を勘案した貸し付けあるいは有価証券の運用等に対する方針というものをそれぞれがつくりまして、それをどういうふうに守っているのか、その守り方をチェックする、こういうところで私どもやっております。
- 浅尾 慶一郎
今度、自主運用を開始されるに当たって、方針を策定するということは申されておりますけれども、その方針の具体的な内容と、それから今、金融機関の場合はそれを守っているかどうかというチェックを監督庁がされるわけでございますけれども、今度は年金の自主運用の場合は国民がチェックをしないといけないんだと思いますので、ぜひ大臣にその方針の具体的な中身を公表していただくのと同時に、守られているかどうかのコンプライアンスのチェックの機会を国民に与えていただけるという旨の答弁をお願いしたいんです。
- 大野 由利子氏(政務次官)
先ほど大臣の方からの答弁がございましたけれども、この運用に関しましては、まずポートフォリオと呼ばれておりますが、大臣が運用の基本方針を定めまして、法律上、内外の経済動向だとか、また市場や民間活動に及ぶ…
- 浅尾 慶一郎
中身は結構ですから。守っていただけるかどうか。
- 大野 由利子氏(政務次官)
大臣の決めました基本方針のもとで、またさらに細かい短期の一年ないし五年ぐらいの管理運用方針の策定をすることとしております。そして、投資ガイドラインの提示を行いまして、そして国民によるチェックは情報公開、また審議会に報告をいたしまして公表する、そして皆さんのチェックを受ける、そういうシステムになっております。
- 浅尾 慶一郎
年金福祉事業団はことし解消されると言われておりますけれども、過去の運用で累損を出しております。私は、運用責任者は運用の結果に対して当然責任を負わなければいけないというふうに思っておりますが、現在の年金福祉事業団の人事体系あるいは報酬体系は運用の結果に対して責任を負う体制になっておりますでしょうか。これが一点。
それから、将来自主運用をされるようになった場合に、新しい体制のもとでその運用の結果に対して、例えば結果がよければ報酬が上がるというようなことを考えておられるか、あるいは結果が悪い場合には人事的な懲罰を受けるかどうか、そういうことを考えておられるかどうか、御答弁いただきたいと思います。
- 丹羽 雄哉氏(国務大臣)
委員、一番よく御案内だと思いますけれども、金融資産には市場の変動は必ず伴うものでございますし、結果に対して責任を負うということは市場運用になじまない難しい問題である、こう考えております。さらなる収益改善に向けて最大限努力をして、そして国民の皆さん方に不安を抱かせないようにすることが最も重大な責任である、このように考えているような次第でございます。
- 浅尾 慶一郎
私は、今の答弁は問題があるのではないかなと思います。なぜかといいますと、市場というものは公的機関以外のところは当然収益を求めて活動している人たちが入っておるわけでございます。そこに収益の結果に関係ない人が入って、それは市場に任せるんだといったら、通常考えればそこで損失が出るのではないかなというふうに思いますが、その点はいかが思われますか。
- 丹羽 雄哉氏(国務大臣)
先ほどから申し上げておりますけれども、安全確実を基本として、債券を中心にして運用を行います。そういうことでありまして、御懸念のような事態が生じることはまずあり得ないと私は考えておりますけれども、もし仮にあった場合には、新しい仕組みのもとでは運用に伴う単年度の損失は年金資金運用基金の中の準備金を使って整理される、こういう仕組みになっています。
- 浅尾 慶一郎
時間が参りましたので終わりますが、私が申し上げたことをもう1回最後に申し上げますけれども、責任の所在が非常に不明確ではないかな、運用をするということに対して責任を今の制度のままでは負わなくてもいいのではないかな、今の御答弁だと負わなくてもいいのではないかということだけ申し上げさせていただきまして、時間が参りましたので終わります。