厚生労働委員会 会議録
平成15年06月10日
金田 勝年氏(委員長)

ただいまから厚生労働委員会を開会いたします。まず、政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りをいたします。

社会保障及び労働問題等に関する調査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長上田茂君外三名の政府参考人の出席を求め、その説明を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。

金田 勝年氏(委員長)

次に、社会保障及び労働問題等に関する調査のうち、精神保健福祉の在り方に関する件を議題といたします。これより質疑を行います。質疑のある方は順次御発言を願います。

浅尾 慶一郎

引き続きまして、労働基準法の改正について質問をさせていただきます。今回の労働基準法の改正は、内閣主導、どちらかというと内閣主導で進められてきたんではないか、労働分野における一連の規制緩和の中で行われてきたものと私自身は認識をいたしております。

そこで、今回の労働基準法の改正を含めて、労働分野における規制緩和の方向性を政府として打ち出された根拠とされています二つの報告書について伺ってまいりたいと思いますが、その二つの報告書というのは、一つは、平成11年12月14日付けの行政改革推進本部規制改革委員会の「規制改革についての第二次見解」、これは平成11年に解雇規制の見直しを打ち出したものでありまして、言わば今回の改正の出発点とも言える報告書でございます。

まず、その点について伺わせていただきますけれども、この平成11年12月14日付けの「規制改革についての第二次見解」において、その中に「解雇が困難であればあるほど、企業は採用を控える」という記述がありますけれども、現行法制の下でも採用に意欲的な企業もあるわけでありますから、こうした記述の根拠はどういったところにあるんでしょうか。

米田 建三氏(副大臣)

お答えをいたします。まず、この御指摘の行政改革推進本部規制改革委員会の「規制改革についての第二次見解」でございますが、この規制改革委員会につきましては、現在の総合規制改革会議の前身ではありますが別個の組織でございまして、その意味では我々は必ずしも直接当事者そのものではございませんが、お尋ねでございますので、現在規制改革を預かる立場からお答えをさせていただきたいというふうに思います。

御指摘の「解雇が困難であればあるほど、企業は採用を控える」という、この旨の指摘でございますが、これにつきましては、少なくとも一般論としては、同一の企業において同一の人員管理条件の下では解雇が困難であればあるほど企業は業績悪化時の人件費負担の増大を恐れ、その分採用は抑制される、こういうことが常識的には想定されるんだろうと思います。

また、採用に意欲的な企業が現行法制でも多いという御指摘でございますが、単に企業をめぐる時々の環境の中で採用に意欲的であるかどうかということによるものであって、解雇規定の有無いかんの事情によるものではないのではないかというふうに考えております。

いずれにしましても、本委員会におきまして第二次見解を取りまとめる過程で、内外からの規制に関する意見、要望のヒアリング、また関係省庁、団体等との意見交換等を経てこのように整理されたものと理解をしております。

浅尾 慶一郎

私の質問は、一般論ということではなくて、この報告書の中で「解雇が困難であればあるほど、企業は採用を控える」というふうに書いてあるわけですから、報告書のベースとなった様々な議事があったんだと思いますが、その根拠を伺っているところであります。

米田 建三氏(副大臣)

一般論という表現をしたのは、冒頭申し上げた現在の私どもの総合規制改革会議というものが直接のこの取りまとめの担当でなかった立場から一般論という言い方を申し上げたわけでありますが、この検討の過程におきまして、申し上げたとおりに、内外から大勢の方の御意見や要望をちょうだいをした、あるいは関係省庁、団体の御意見も伺ったという、そういう総合的な作業の中でこういう表現になったというふうに理解をしておるわけでありまして、これが一つの根拠であるというふうな形で御説明をするのはちょっと難しいかと考えます。

浅尾 慶一郎

そうした形で報告書がまとめられているということでありますから、それなりに多分根拠はあるんだと思いますが、次の質問に移らさせていただきます。

解雇規制は再就職をしようとする者には不利に働く傾向があるという記述がありますけれども、そういう傾向は具体的に何をもってそう判断しているんでしょうか。そういう雰囲気があるとか空気があるということではなくて、具体的な根拠が何かあるんでしょうか。

米田 建三氏(副大臣)

特定のこれが具体的な根拠であるというふうに明示されたものがあるとは承知をしておりませんが、御指摘についてはこの第二次見解の文脈から判断するしかないわけでありまして、「解雇が困難であればあるほど、企業は採用を控える」、こういう事情からは、解雇が困難であればあるほど求職者にとっての就職のハードルが高くなると、こういうことが同義的に言えるのであろう、したがってまた、これをもって解雇規制がこれから企業に就職しようとする者やいったん企業を辞めて再就職しようとする者には不利に働く傾向があると、そういうふうに整理をしているのであろうというふうに理解をしておるわけであります。

浅尾 慶一郎

したがって、具体的にということではなくて、どちらかというと、そういう風潮を採用したということだというふうに理解をいたします。

さらに、これは平成13年7月24日の、今度は直接の御担当だと思いますが、総合規制改革会議の「重点六分野に関する中間とりまとめ」の中で、就職から定年退職まで一企業で雇用を保障するのではなく──ごめんなさい、就職から、失礼いたしました。

もう一点、戻りまして、同じ報告の中で、さらに、判例の解雇権濫用法理が企業の採用意欲をそいでいるという指摘があるという記述もあるわけでありますが、そうした指摘があるということについて具体的にだれがそういう指摘をしているのか、伺いたいと思います。

米田 建三氏(副大臣)

御指摘の部分につきましては、やはり見解を取りまとめる過程で、先ほど申し上げたとおり、内外からの規制に関する意見あるいは要望のヒアリングが行われました。また、関係省庁、団体との意見交換等も行われ、その結果の整理であります。

解雇権濫用法理が企業の採用意欲をそいでいるというこの指摘、主体いかんにかかわらず、解雇規制をめぐる本委員会の事実認識の一環として位置付けられているというふうに理解をしております。

なお、具体的にだれがではその旨の指摘を行ったのかという、こういうことになりますが、現在、これを記録している検討資料は率直に申し上げて現存しておりません。また、その結果確認することができない旨、御理解いただきたいと思います。

浅尾 慶一郎

これは、その資料がないという理由はどういうところにあるんでしょうか。平成11年12月14日付けですから、まだ多分会議録等はあるんじゃないかと思いますが。

米田 建三氏(副大臣)

正確に申し上げますと、本見解が取りまとめられた平成11年当時は、当時、本件については当時の総務庁が所管でございました。そして、規制改革関係事務につきましては平成十三年の省庁再編時に現在の規制改革会議事務室に関連資料とともに引き継がれたわけでありますが、当該資料についてはそもそも引継ぎを受けておりません。また、旧総務庁、現総務省にも現存をしておらないと、こういう事実を確認をしております。

浅尾 慶一郎

かなり資料の管理が、もし今御答弁いただいたことが事実だとすると、ずさんであったというふうに言わざるを得ないと思います。

そうすると、本来、報告書を事務局でまとめるときに、どういった指摘を採用し、どういった指摘を採用しないのかと、そういう基準はあるんですかと聞いてもお答えになれないということになりますか。それとも、その点についてはお答えをいただけますでしょうか。

米田 建三氏(副大臣)

御満足いただける答えになるかどうか分かりませんが、私も資料がないという報告にはびっくりした一人でありますが、なぜないのかといいましても、ないということなのでないわけでありますが。

一般的に申し上げまして、委員会としての意思決定は内外からの様々なヒアリング、意見交換等を行いながら調査、審議が重ねられると、こういう形であるわけでありますが、御指摘のだれの指摘を採用し、だれの指摘は採用しないのかという基準があるのかどうかというお尋ねに対しましては、そういう基準はありません。ないわけでありまして、委員会としての議論の過程、審議の過程の中で最終的に責任を持って意思決定をされたという形の中での公表になっておるわけでありますので、その作業過程の中での適切な評価、判断の結果であるというふうに理解をしております。

浅尾 慶一郎

今の御答弁ですと、相当、ある面、事務局の裁量でもってその委員会の議論あるいはその報告書をリードできるということになってくるのかなというふうに思いますので、その点を指摘させていただきたいと思います。

また、「解雇をめぐる実態を把握すべきである。」という記述もありますが、じゃ、この点についてはその後、その解雇を巡る実態を把握したんでしょうか。

米田 建三氏(副大臣)

把握はされました。経緯を申し上げますと、この解雇を巡る実態の把握につきましては、第二次見解を踏まえまして、規制緩和推進3か年計画、平成12年の3月31日、閣議決定でありますが、これにおきまして、平成12年度に旧労働省において解雇を巡る実態を把握することとされたわけであります。そしてその結果、平成12年度に調査、取りまとめが行われました。その後の解雇規制の在り方を巡る議論の中で参考資料になっているものと理解をしております。

浅尾 慶一郎

そうすると、まあそうした資料はもらわれたということでありますが、その分析はどういう結果になったんでしょうか。

米田 建三氏(副大臣)

細かい数字、全部お望みですか。そうすると答弁で大分時間食っちゃいますが。じゃ、要点でよろしゅうございますか。

まず、この解雇事案のうち、労働組合がない割合としまして、いろんな調査が行われた数字がございます。そして、労働組合がないケースが多数を占め、裁判に訴える資力に欠ける者に対し、極めて救済が困難な状況にある者と思料されるという一つの調査結果が出ております。

また、二番目に、解雇を行った事業場の規模の、事業所の規模の調査も行われました。ここにおきましては、やはり解雇が行われるのは中小規模の事業所が多数を占めておる。そして、裁判に訴える資力に欠ける者は解雇される可能性が高いものと考えられるというふうな結果も出ております。これは都道府県の労働局の担当者からの聴取という形で調査が行われております。以上、概要だけでございますが。

浅尾 慶一郎

確認ですけれども、その都道府県の労働局の数字はあるということですが、それを見ての分析というものでは、その当時のその行政改革推進本部の規制改革委員会でなされたのかどうか、あるいはその後内閣府でなされたのかどうか。数字そのものがあるということではなくて、その分析と、今の御答弁ですと、どちらかというと数字を労働省あるいは労働局からもらったということにしかならないんじゃないかと思いますが、それを見ての分析という点ではどうでしょうか。

米田 建三氏(副大臣)

もう少し詳しく申し上げますと、平成10年10月1日から平成12年の3月31日の間に都道府県労働基準局の紛争解決援助制度において申出があった事案のうち、解雇に関する事案に絞って調査をしたわけでありまして、227件で、件数としては227件であります。

そして、調査時期は平成12年度の第1四半期の4月から6月でありました。そして、調査項目でありますが、解雇の種類、そして解雇を行った事業場の規模、また解雇された者の年齢等について、解雇の手続について、解雇の理由について、そしていわゆる整理解雇の四要件等について、また、整理解雇の実態について、紛争解決援助制度についてと、この八項目で調査を行いまして、このデータを基にその後の論議の参考資料に付されたというふうに理解をしていただきたいと思います。

浅尾 慶一郎

次に、同じく労働分野における規制緩和の方向性を政府として打ち出す理論的な根拠にされております平成13年7月24日、「重点六分野に関する中間とりまとめ」という報告書について、この分析が合理的になされたかどうか、そういった観点から伺ってまいりますが、まず、この平成13年7月24日付けの「重点六分野に関する中間とりまとめ」の中に、その中に、「検討の方向性」というところでは、解雇基準の明示化という問題は将来的な検討課題とされているのに対しまして、「具体的施策」というところを見ますと、解雇基準やルールを立法で明示するという労働基準法の改正に早急に着手すべきということになっていますが、こういうふうに判断するに至った理由はどういうところにあるでしょうか。

米田 建三氏(副大臣)

将来的な検討課題とされておるのに明示する、そういう結果に至った理由は何かというお尋ねであろうと思いますが、経緯をなぞりながらお答えさせていただきたいんですが、まず、中間取りまとめでは国際競争が激化をし、さらに本格的な少子高齢化社会を迎える、こういう中で円滑な労働移動や就労形態の多様化を可能にするような、そういう規制改革が喫緊の課題であるというふうに位置付けているわけであります。

そして、それに対しまして解雇基準やルールの明示については将来的な検討課題というふうに、御指摘のようにしてはいるわけでありますが、しかしまた一方で、経済のグローバル化に伴う競争環境の激化や技術革新により労働移動が増えると考えられることから、これに対応した21世紀にふさわしい労働市場システムの整備を図る必要がある、そのためには早急に解雇基準やルールについても検討に着手することが必要であるというふうに一方でこの取りまとめにおいて指摘をまたしているわけでございます。

さらに、平成14年に入りまして、厳しい経済情勢にかんがみまして全体として一層の規制改革の推進が必要であることから、総合規制改革会議といたしましては、解雇基準等についても平成14年7月の中間取りまとめで迅速に検討、結論を出すべきであるというふうに発展をしておるわけでありまして、平成14年12月の第二次答申におきましては、次期通常国会に法案提出等所要の措置を講ずべきであるというふうにしたものでございますので一応の流れは踏んでおるというふうに理解をしております。

浅尾 慶一郎

労働基準法は、本来、労働者保護立法でありますから、これを規制緩和すると、あるいは今のお話にありますような例えば解雇の基準を定めるというようなことを法改正の中でするということは、今まで保護されていたものが保護の必要性がなくなったからだというふうに考えるわけでありますが、なぜ保護する必要性がなくなったと判断するに至ったんでしょうか。

米田 建三氏(副大臣)

政府は、労働者を保護する必要がなくなったなどというそんな恐ろしいことはいささかも考えておりませんので、労働者の保護は極めて重要な課題であるというふうに考えております。

総合規制改革会議では、議員の御指摘のようなそういう労働者の保護が必要がなくなったというふうな観点からではございませんで、労使双方の事前予測可能性を高める観点、つまりその解雇に際して発生する労使間のトラブルを防止したいという、そういう観点から解雇基準等の立法での明示を検討すべきというふうにしているところでございます。

すなわち、規制改革の推進に関する第一次答申、これは平成13年12月の11日でございますが、等で述べられているように、この解雇について、労働基準法はこの予告手続等を規定しているだけで、解雇そのものの有効・無効は、現在のところ、いわゆる解雇権濫用法理を始めとするこの判例法にその判断がゆだねられているわけであります。しかし、こういう状況ではその具体的な基準が明確ではないわけでありますので、答申では、この解雇の有効・無効に関する労使の予測可能性を高めるために、いわゆる解雇権濫用法理を始めとするその判例にのみ、判例法にのみゆだねるのではなく、立法で明示することを検討すべきであるというふうにしているわけでありまして、労働者保護の必要性がなくなったというような判断はいささかもございません。

浅尾 慶一郎

今、労働者保護の必要性は引き続き重要だという御答弁をいただいたわけでありますが、その解雇権、あるいは解雇の基準を定めるという、定めても保護は引き続きなされるんだというふうに判断をされておるわけでありますが、その客観的な裏付けというものは、今の予測ということではあるのかもしれませんが、ほかに客観的な裏付けというものはあるんでしょうか。

米田 建三氏(副大臣)

既に述べさせていただいたわけでありますが、この総合規制改革会議では、この労使双方の事前予測の可能性を高める、こういう観点から解雇基準等の立法での明示を検討すべきであるというふうに総合規制改革会議ではそのような表現で述べさせていただいているわけでありまして、労働者保護の有無という観点からではございません。

浅尾 慶一郎

ということは、労働者保護という観点ではなくて、事前予測可能性を高めるという観点から定めたということでありますが、事前予測可能性が高まるということと労働者保護が引き続きなされるということが場合によってはこれは矛盾するんではないかなと思いますが、その点矛盾しないんだという点について御説明いただけますでしょうか。

米田 建三氏(副大臣)

解雇基準等の立法での明示を検討すべきというその基本的な観念は、これはもう言うまでもなく、労働者保護は当然必要であるという前提に、労働者保護という視点を欠いてはならないということはこれ当然前提になっているわけでありまして、ただいま御説明申し上げたのは、総合規制改革会議で解雇基準等の立法での明示を検討をすべきであるというふうに述べさせていただいておるのは、それは労使双方の事前予測可能性を高めるという観点から述べさせていただいておると。しかしながら、当然これはその結果として労働者保護につながるものであるというふうに理解をしております。

浅尾 慶一郎

御答弁を伺っておりますと、そういうふうになるものだという、何というんですか、予測が入っているんじゃないかなというふうに思いますが、労働の分野における規制緩和をこの2つの報告書において出しておられるわけでありますけれども、その予測と必ずそうなるというのは若干違うんじゃないかなというふうに思います。特に、副大臣御自身も御答弁されておりますように、労働者の保護についてはいささかも変わらないんだということだと思いますと、今後、こうした分野における規制緩和については、その必要性と効果についてやはり慎重に、労働者保護は引き続きやりながら、その必要性と効果が労働者保護に反しないという点でその必要性、効果を吟味する必要性があるというふうに思いますが、その点について十分心掛けていただければと思います。

そこで、最後に内閣府に対しまして、最後に副大臣にお伺いさせていただきますけれども、今後は、その一部の意見ではなく、実際の具体的なデータに基づいて客観的な議論になるように事務局として責任ある対応をお願いしたいと思いますが、御決意を伺いたいと思います。

米田 建三氏(副大臣)

総合規制改革会議には私自身もしばしば出席をさせていただいております。もしごらんいただくならばもうお分かりをいただけると思いますが、相当な率直かつ真摯な議論が、そしてまた自由な議論が委員の先生方によって行われているわけでございます。 しかしながら、今御指摘のように、当然のことではありますが、一部の意見に偏ることがなく、データに基づいた客観的な議論となるように議論を進めていただいてはおりますが、さらにただいまの御指摘を踏まえながら、今後もその基本的な考え方をしっかり堅持しながら慎重に審議をしていただきたいというふうに考えております。

浅尾 慶一郎

是非よろしくお願いしたいと思います。では次に、この内閣府の作った報告書について、書いてあることがどのように実施されているかということをお伺いしてまいりますが、総合規制改革会議の「重点六分野に関する中間とりまとめ」は、経済社会の構造変化に対応し、市場を通じた雇用保障を拡充という方向性を打ち出しております。この方向性は私自身も非常によく理解できるわけでありますが、そして一方で、その報告の中では、まず取り掛かるべきは、円滑に人材の移動が行われるための労働市場システムの整備とされております。このことも重要なことだと思いますし、昨日の参議院本会議におきまして、アメリカの例を引き合いに出しながら、円滑に人材の移動が行われ、またそのことが不利益変更にならないということであれば労働者は不安を抱えていないということも申し上げさせていただいた次第であります。

今申し上げたような円滑な人材移動のためには、就職情報が行き渡って転職や就職のガイダンスを受けやすい条件整備をしていかなければいけないというふうに報告書の中では書いてあるわけでありますが、厚生労働省はこうした条件整備のために何を具体化したんでしょうか。

坂口 力氏(国務大臣)

今御指摘ありましたように、就職情報が行き渡って転職や就職のガイダンスを受けやすい条件整備ということでございまして、具体的な問題といたしましては、ハローワークの有します求人情報をインターネットで提供をするいわゆるハローワークインターネットサービスを平成14年の1月の29日から全国で実施をいたしておりまして、さらに本年の一月から、求人者の意向を踏まえて、企業名、所在地、連絡先を含む情報を提供をするといったようなことも行っております。

また、平成13年8月には、民間職業紹介事業者、それから民間求人情報提供事業者、経済団体、公共職業安定所、これらが保有をしております求人情報をインターネットで提供するいわゆるしごと情報ネットを整備をするといったようなことを行っております。

さらにまた、雇用保険受給者の早期再就職を図るといった立場から、ハローワークにおきまして、民間への委託でありますとか民間の講師の採用によりまして、民間のノウハウを活用しながら労働市場状況、キャリアの棚卸しと自己分析、それから再就職のための技法等を内容としました就職支援セミナーの開催等々を行っているところでございます。

また、一番喫緊では、キャリアカウンセラーを養成をいたしまして、そしてできるだけきめ細かにやろうといったようなことを行っているところでございます。

浅尾 慶一郎

様々、就職情報が行き渡るような活動をされているのはよく分かるんですけれども、実際にその利用者の声というのはちなみに把握されていますか。就職情報が行き渡るようになったという形で把握されているんでしょうか。

森田 次夫氏(大臣政務官)

利用状況といいますか、そういった御質問だろうと思うんでございますけれども、ハローワークのインターネットサービスでございます、大臣も御説明がございました、につきましては、アクセス件数等を把握しておりますが、企業名公表後の平成15年4月の1日平均アクセス数でございますけれども、一日約17万件となっております。企業名の公表前のアクセス数でございますが、これにつきましては1日平均9万5千件でございますので、かなり大幅に増加をしたと、このように思います。

それから、官民問わずでの情報ネットワークでございますけれども、しごと情報ネットについてでございますが、平成15年5月1日の平均アクセスは、パソコン、携帯電話ともにそれぞれ約47万件、このようになっておりまして、十分な活用がされていると、このように考えております。

それから、就職セミナー、就職支援セミナーについてでございますけれども、大半の方から求職活動の参考になったと、こういうような評価を聞いております。特に、愛知、大阪、広島、福岡の四労働局でのアンケートによりますと、ほぼ9割の方から参考になったと、こういうような評価もいただいているところでございます。

浅尾 慶一郎

それでは、同じ報告に転職や一時的失業のコストが過大でない条件整備をしなさいということも書いてあるわけでありますが、この点ではどういう形の手だてを取られたんでしょうか。

坂口 力氏(国務大臣)

これはなかなか、言うのは簡単でございますけれども、なかなかここは難しいところだというふうに思っておりますが、できるだけ転職や一時的失業のコストが過大にならない条件整備をしたいというふうに思っていたところでございます。

平成13年10月から雇用対策法によりまして、事業所の閉鎖等のいわゆる事業規模の縮小等に伴いまして1か月に30人以上の離職者を出す事業所に対しましては、これは再就職援助計画の提出を義務付けておりまして、それで、一人一人やるのではなくて、そうしてそういう企業に対してまとめて対策を作ると。そういう提出されましたところにはハローワークからそこに出向いたしまして、その企業の中でいろいろ相談を受けるといったようなことをやっておりますが、そうしたことによってできるだけコストが過大にならないようなことを手掛けているといったことが主な内容でございます。

そのほかは、各種助成金等もあるわけでございますが、それらの支給等も行ってまいりました。

それから、ハローワークにおきましては、民間の専門家でありますとか実務経験者を就職支援ナビゲーターとして配置をいたしまして、担当制を決めましたり、個々のニーズに応じた体系的な取組を行う、障害者には障害者対応、あるいは女性には女性対応といったようなことを行っておりまして、できる限りやりたいというふうに思っておりますが、しかし、ここは書いてもらってあるとおりにはなかなかいきにくい側面もあるということを自覚しているところでございます。

浅尾 慶一郎

書いてあるのがなかなかやりづらいというのは正におっしゃるとおりだと思いますが、一方で、ここが一番、特に失業されている方等々にとっては一番重たいところなので、そこに対する対策を是非よろしくお願いしたいと思います。

さらに、同じ報告書に募集・採用における年齢の制限緩和というようなことについても取り組みなさいということも書いてありますが、この点については具体的にどうしたことをされておられるんでしょうか。

森田 次夫氏(大臣政務官)

募集・採用における年齢制限の緩和についてでございますが、雇用対策法に労働者の募集・採用に当たっての年齢制限の緩和の努力義務が設けられ、また同法に基づきまして年齢制限の緩和に関する指針が作成されまして、いずれも13年10月から実施されておるわけでございますが、厚生労働省では、雇用対策法及び指針に基づきまして事業主への周知と理解の徹底を図ってきたところでございます。

その結果、ハローワークにおける全求人に占める年齢不問求人の割合でございますが、改正法施行前でございますが、これは平成13年9月でございますけれども、1.6%でございましたのが最近では13%程度と一定の効果が上がっているものと考えておりますけれども、ただ、直近を見ますと横ばい状態である、こういうことでございます。このため、本年一月には、募集・採用における求人年齢制限の緩和の徹底に向けまして、現在13%程度でございますものを平成17年度に30%とする目標を設定したところでございます。

今後とも、その達成目標に対しまして、シンポジウムの開催であるとか事業主に対する勧奨、指導など着実かつ計画的な取組を展開してまいりたい、このように考えております。

浅尾 慶一郎

今、御答弁いただいたわけでありますけれども、今回の改正の中で定められております有期労働契約、あるいは先般法案審議をいたしました派遣労働などの雇用の選択肢を拡充することが今までの質疑の中で足りない部分を補完するものと位置付けられておりますけれども、本来は順序が逆ではないかなと。つまりは、年齢の制限緩和とか、転職や一時的失業のコストの過大にならないような条件整備というのを先にやった方がいいのではないかなと思いますが、その点についてはいかが思われますでしょうか。

坂口 力氏(国務大臣)

ここに書かれてあります他の施策を補完するものという意味がどういう意味なのか、ちょっと分かりにくいんですが、労働市場システムの整備というものとやはり同列にと申しますか、同時進行でこれは行っていかざるを得ないんだろうというふうに思っております。したがいまして、労働市場システムの整備と有期労働契約、そして労働者派遣事業制度の見直しといったようなことを並行して行わせていただいているということでございます。

今回の有期労働契約、それから労働者派遣事業制度につきましては、昨今のこの厳しい労働情勢でありますとか、働き方の多様化等が進む中で、我が国の経済社会の活力を維持向上させていくためにもやはり並行して行わなければならないというふうに考えているところでございます。

個人の持っていただいている能力を発揮をしていただくために役立てばというふうに思っておりますが、一方におきまして、またマイナス面というものも、先ほどから申し上げておりますように、これは起こる可能性もございますので、そこをどのように抑えていくかということが今後の課題であるというふうに思っている次第でございます。

浅尾 慶一郎

今の御答弁ですと、私はやはり、そもそも円滑に人材移動が行われる労働市場のシステムが整備されて、そしてその後に有期雇用、有期労働契約とか派遣労働といった雇用の選択肢が拡充する、あるいはまた解雇基準が明示をされていくという方が本質的には労働者保護に資するのではないかなというふうに思いますが、その点の考え方について、いや、そうではないんだと、これは同時にやらなければいけないんだというふうに大臣が考えておられるのか。やはり本質的には人材の移動が円滑に行われ、そこにコストがない、当該人材、労働者にとってコストが掛からない形がいいのか。だけれども、今の経済状況を考えると、やはりそれは同時に、有期労働契約も、あるいは解雇基準の明示も派遣労働についても同時にやらざるを得ないのか。その点についてはどちらの認識の立場に大臣立っておられるか、その点を伺いたいと思うんですが。

坂口 力氏(国務大臣)

私は、労働移動というものが円滑に行われない理由は様々あるというふうに思っておりますが、その中の一つには、働き方と申しますか、多様な働き方というものが自由にできるようになるということも私は大きな影響を与えるというふうに思っている次第でございまして、そうした意味から、同時にこれは行う方がよろしいのではないかというふうに考えている次第でございます。

浅尾 慶一郎

今の大臣の御答弁で大体次の質問の答えに、多分、大臣のお答え予想できるんですけれども、同時にやる前提は、使用者がすべて法律を悪意では使わないという前提があって、多分同時でやっても問題がないということなんだと思いますが、中にはそうした制度ができればそれを悪用する人も出てこないとも限らないんではないかなというふうに思うわけであります。

そういうふうに考えると、労働市場におきます規制緩和の前に本来やるべきことがあるんではないかなというふうに思いますが、こうしたことについてどのように考えられるか、どのように取り組んでいかれるか、伺っていきたいと思います。

坂口 力氏(国務大臣)

悪意と申しますか善意と申しますか、やはりそういう制度を作りましたときには様々なそれに対する対応の仕方があるというふうには思いますけれども、私は、様々な働き方のルートが存在をするということは、働く人にとりましても、一時的にやはりそうしたことによって働く場所を得られやすいということも私は存在するというふうに思っておる次第でございます。

浅尾 慶一郎

おっしゃることはよく分かるんですが、様々な制度があるということで、現在、常用雇用の立場にある人が、そうした制度ができたと、そして使用者側がそういう方向に変更するんだということになって、不利益変更を受けることがないようにしていかなければいけないという趣旨でありますので、是非その点については今後の監督行政の中でも御検討いただければというふうに思います。

時間の関係で次の質問に移りたいと思いますが、もし今後の監督行政の中で何か御所見があれば、簡単に大臣に伺いたいと思いますが。

坂口 力氏(国務大臣)

常用雇用の皆さん方をどんどんと派遣でありますとかあるいは有期雇用に変えていくというようなことが起こってまいりますと、これはやはり問題でございますし、現在のところ、そこまでの傾向はないというふうに思っておりますが、しかし、今後の動向をよく見まして、もし仮にそういった方向に大きく流れるようなことがあれば、やはり何らかの歯止め対策というのは必要だというふうに思っております。

浅尾 慶一郎

もしそういうことがありましたら、是非そういう方向でお願いしたいと思います。

次に、今回の政府原案は衆議院の審議で修正がされているわけでありますが、その政府原案についてどういった点が問題だったか、提案者に伺いたいと思います。

城島 正光氏(衆議院議員)

お答えしたいと思います。解雇に係るまず規定についてでありますけれども、政府案においては、使用者が労働者を解雇する権利を有していることを法文上、確認的に規定をした上で、その解雇が合理的な理由等を欠くときは権利濫用として解雇無効となると説明されていたところでありますけれども、衆議院における論議で、政府案のままでは解雇を促進する規定であると取られかねず、また裁判における主張立証の在り方が変わるのではないかという強い意見があったところであります。

また、有期労働契約に係る規定につきましては、契約期間の上限延長に伴い契約期間中の退職の自由が更に拘束され、転職の機会が更に狭められることとなるため、契約期間中等であっても労働者には退職の自由が認められるべきであるとの強い意見があったというところが一番大きな問題点として論議されたところではございます。

浅尾 慶一郎

それでは、修正案をまとめた、その点について感想を伺えればと思いますが。

城島 正光氏(衆議院議員)

感想ということでございますが、私自身は、この労働基準法の改正の審議に臨むに当たりまして、よく言われることでありますけれども、政治そのものの基本というのが、基本の一つと言った方がいいかもしれませんが、働く意欲と能力ある人には常に就業の機会を与えることであるというような、そういう考え方、あるいは昨今いろいろ論議があるところでありますけれども、それにしても、労働の尊厳という精神がこの我が国の社会の中でも脈々と生き続けることが今極めて大事じゃないかという観点から論議に臨んだつもりであります。

また同時に、今般特に論議になりましたこの解雇ルールについては、諸外国の例を見ましても、どういう解雇ルールを決めるかということがその国の雇用の在り方あるいは働き方といったことの正に理念といいましょうか、あるいは哲学といいましょうか、そうしたことに裏打ちされているのがこの解雇ルールだというふうにとらえているわけであります。

そうした意味で、我が国で初めてこの労働基準法の中で解雇ルールを定めるということでありますので、そうした観点から考えますと、我が国のこれからの働き方とかあるいは企業経営の在り方のみならず、社会の在り方ということに極めて大きな影響を与えるんではないか、与えるものではないかというふうに考えたところでございます。

そうした観点からしますと、政府との論議での厚生労働委員会、あるいは与党との修正協議においても、双方ともにそうした意味で立場を超えて真摯な論議が展開し得たんだというふうに思いますし、その結果として、衆議院においては無所属を除いて全党全会派の修正案については賛成を得られたということも含めて、大変意義深い論議と修正案になったんではないかというのが感想でございます。

浅尾 慶一郎

それでは、大臣にお伺いいたしますが、この修正部分の解釈について、政府原案との相違点を確認したいと思います。

森田 次夫氏(大臣政務官)

先ほど来からいろいろと答弁もございますが、雇用に係る規定につきましては、この規定が解雇を促進する規定であると、誤解といいますか、懸念といいますか、されることがないよう修正されたものと承知しておりますけれども、政府原案と修正案はいずれも判例で確立した解雇権濫用法理を法文化することとしたものに変わりはなく、特に衆議院で焦点となった当事者の主張立証の在り方につきましても、いずれの案でも現在とは変わらない、このように考えております。

浅尾 慶一郎

こうした解釈で提案者はよろしいんでしょうか。

城島 正光氏(衆議院議員)

そういうことだと思いますが、修正案においては少なくとも特に主張立証責任のところにつきましてはより明確になったんではないかと思っておりますが、基本的にはそのとおりだと思います。

浅尾 慶一郎

政府原案要綱の審議会への諮問・答申では、労働側委員から厳しい意見が表明されております。今後は、この労働法制の保護法制としての性格、重要性にかんがみ、慎重な法案作成をお約束いただきたいと思いますが、大臣、御答弁いただけますでしょうか。

坂口 力氏(国務大臣)

この労働基準法の改正につきましては、一昨年からいろいろと御議論をしていただいてまいりまして、そしてそれぞれのお立場から御意見を伺ってきたところでございます。

確かに、反対をしていただいた部分もございますし、そうした部分もございましたけれども、最終的には昨年の12月に審議会といたしまして公労使三者一致をして建議をいただいたところでございます。

しかし、その中の色合いというのは若干それは差異はあったんだろうというふうに思っておりますが、今後も厚生労働省の問題はすべて公労使三者構成の審議会、これはもうずっとそういうふうに今までからもやってまいりましたし、すべて公開でやらせていただいておりますし、これからもそうした今までの立場を踏まえて多くの合意が得られるようにしていきたいと考えております。

浅尾 慶一郎

是非そういう方向でお願いしたいと思います。また、このたび法律に明文化されたこの解雇ルールについて、労働政策審議会の建議にもありますように、これまでの代表的な判例及び裁判例の内容を整理解雇四条件に関するものを含めて周知すること等により、この規定の趣旨について十分な周知を図っていただきたいと思いますけれども、どのように対応されるでしょうか。

森田 次夫氏(大臣政務官)

政府といたしましては、リーフレット等を作成をいたしまして、都道府県の労働局あるいは関係行政機関におきまして解雇権濫用法理を確立した最高裁の判決を始めといたしました判例、裁判例の周知を図ってまいるとともに、集団指導等のあらゆる機会をとらえましてこの規定の周知を図ってまいりたい、そしてこの規定の趣旨について使用者の理解を促進して安易な解雇や不当な解雇の防止に努めてまいりたい、このように考えております。

浅尾 慶一郎

それじゃ具体的にどの判例、裁判例を使われようとされていますか。

森田 次夫氏(大臣政務官)

具体的には、例えば解雇権濫用法理を確立いたしました最高裁の判決と言われております日本食塩製造事件、昭和50年、それから高知放送事件、52年を始め、いわゆる整理解雇四条件についてのリーディングケースと言われております東洋酸素事件における東京高裁の判決、54年でございます、も含めまして多数蓄積されてきた判例、裁判例を整理した上で、これまで解雇権濫用法理によってどのような事例が解雇有効と判断され、また解雇無効と判断されてきたのか、周知に努めてまいりたいと思います。

浅尾 慶一郎

じゃ、そのための予算はどうなりますでしょうか。また、何をいつまでに行うつもりでしょうか。

坂口 力氏(国務大臣)

判例でありますとか裁判例につきましてのリーフレットは、この法律が成立をしました場合には、その後施行までには直ちに完成をさせまして、この施行に合わせて周知徹底に努めてまいりたいというふうに思っております。

これに要します費用につきましては、適切な額を用意をしたいというふうに思っておりまして、十分に周知徹底できるようにしたいと思っております。

浅尾 慶一郎

次に、有期労働契約について伺いますが、有期労働契約については多様な選択肢を用意するという観点から労働者のニーズにこたえたものだというふうに、あるいはこたえる側面もあるというふうに先ほど大臣の方からも御答弁をいただきました。

じゃ、実際に現在の常用労働者あるいは学卒者等の労働者側のニーズはいつ、どのような形でそのニーズを調査し、把握したんでしょうか。

森田 次夫氏(大臣政務官)

ちょっと余分な答弁になるかも分かりません。質問だけじゃなかったかと、ちょっと私取り違えてよく分からなかったんですけれども。

有期契約労働につきましては、厚生労働省において平成11年と13年度に調査をいたしております。そこで、自分の希望や都合で有期労働契約という働き方を選択している者が約四割強でございます。そして、そのような中でもっと長い契約期間が望ましいと考えている労働者も約四割存在をいたしております。

そういったことで、そのニーズ等は把握しているわけでございますけれども、しかしながら常用労働者が有期労働契約に切り替えられることを望んでいるとか、また新規の学卒者が有期労働契約を希望しているかといったことにつきましては特に把握はいたしてございません。

浅尾 慶一郎

じゃ、次の質問ですが、有期労働契約について、現行一年契約にまつわる途中退職や雇止めに関するトラブルについては年間どのぐらいあるでしょうか。

森田 次夫氏(大臣政務官)

雇止めにつきまして、平成11年の調査によりますと、事業所調査では、雇止めに伴うトラブルがあったとした事業所は一割程度でございますけれども、そのトラブルの原因は、理由に納得してもらえなかったとか、更新への期待についての認識の違いが多くなっていると。

また、有期契約労働者が契約期間中に退職したことに伴いまして使用者から損害賠償を請求されたような具体的な事例は把握しておりません。

浅尾 慶一郎

それでは、例えば肩たたきやリストラにより解雇された上で一年契約を結ぶという事例はどのくらいあるんでしょうか。

森田 次夫氏(大臣政務官)

労働契約は労使当事者間の合意に基づきまして締結されるものでございますので、いわゆる肩たたきやリストラにより解雇した上で一年契約を締結している労働契約の事例の具体的な数については把握しておりません。

契約期間1年以内の労働者は、総務省の労働力の調査によりますと、平成14年度には727万人で、全雇用者5,331万人でございますけれども、占める割合は13.6%となっております。

なお、新規学卒労働者で一年契約を結んでいる者の数は把握しておりませんけれども、平成11年に実施した有期契約者に関するアンケート調査によれば、有期契約労働者の現在の会社への入社形態等につきまして労働者に調査したところによりますと、5,106名中に新規学卒採用の者が2.1%、人数で107人、このようになっております。

浅尾 慶一郎

現行の14条は、専門的知識を有する労働者が不足する事業場において認められた者としておりまして、この限定があるために現在いる労働者を解雇して新たに専門知識を持つ労働者を有期で雇い入れることはできなかったわけであります。

今回、このことを削除した措置の趣旨はどういうところにあるんでしょうか。また、そうしたことによって解雇される者は生じないんでしょうか。

森田 次夫氏(大臣政務官)

現行の有期労働契約の期間の上限の特例でございますけれども、高度の専門的知識等を有する労働者が不足している事業場において、新たに業務に就く者のみに対象を限定することとして3年契約で更新することを認めていないわけでございますけれども、しかしながらこのような高度の専門的な知識を有する労働者につきましては、現行の特例の施行以来四年を経過しておりますが、労働者がその意思に反する拘束を強いられる等の弊害が生じているとは聞いておりません。むしろ一年契約への切替えによりまして、三年を超えた雇用を継続しているケースもあることを踏まえると、対象労働者が不足している事業場において新たに業務に就く者のみを対象とする限定が専門的能力の十分な発揮の阻害要因となっている、こういった可能性もあるわけでございます。

そうした状況等にあるわけでございますが、このため、今回の改正による新たに特例、上限五年でございますけれども、におきましては、対象労働者が不足している事業場において新たに業務に就く場合には、限定せず特例の適用を認めることとしたものでございます。

なお、今回の改正におきましては、解雇について、客観的に合理的な理由、いわゆる社会通念相当であると認められない場合は、権利の濫用として無効であることを限定しておりまして、専門的な知識等を有する労働者を有期労働契約に雇い入れること等を理由として、現在既に雇用している常用労働者を解雇することはこの規定に照らして無効となるものと考えておりますので、そういうことはないと思います。

浅尾 慶一郎

実際にそれは、調査は特にしていないと思いますが、調査されましたか。

森田 次夫氏(大臣政務官)

過去の裁判例の蓄積等から、このようなケースの解雇は無効となるということが明らかだと思いますので、特段の調査は必要ないと、こういった認識でございます。

浅尾 慶一郎

現行法では、3年有期の更新をする場合には3年の次は1年契約しかできないわけでありますが、改正法では、3年の次は3年、5年が5年として更新できるようになるわけであります。このことは、場合によっては常用雇用の代替を進めることになるんではないかという危惧を持つわけでありますけれども、何らかの歯止めは考えていないんでしょうか。

坂口 力氏(国務大臣)

今は、この御質問の問題は、これはいわゆる常用雇用者とそれから有期契約労働者の構成をどのようなものにするかということと結び付いてくるんだろうというふうに思っておりますが、企業の人材戦略でありますとか、事業のこれからのやり方というものと非常に密接に関係いたしておりますから、なかなか一概に言いにくいところでございますが、厚生労働省が行いました雇用動向調査の特別集計によりますと、一般労働者をパート労働者に代替している事業所の割合は、平成12年におきまして約1割にとどまっております。それからまた、バブル期の平成3年と比較をいたしましても大きな増加にはなっていないということでございますが、しかし今後はこの状況というのはもう少し観察をしていかないといけないというふうに思っておりまして、過去のデータだけで考えてはいけないというふうに私も思っているところでございます。

また、平成13年の有期労働契約に関する調査結果によりますと、有期労働契約に関する法制度上の規制が緩和された場合、正社員数が変わらないあるいは増加すると答えた事業所の割合は六割強を占めておりますが、これらも今までの一つの調査でございまして、これからひとつこうした面もよく調査をし、絶えず状況の観察に努めていきたいと考えております。

浅尾 慶一郎

今、大臣の方から、これからよく調査をしていきたいというふうに御答弁いただきました。これは是非やっていただきたいと思いますので、具体的に、絶えずということなのか、この法案が成立し、施行されたら何か月か後には必ずということなのか、その点について御答弁いただけますでしょうか。

坂口 力氏(国務大臣)

この法律、施行されまして一年ぐらいの経過を見れば大体今後の動向というのは分かると思いますから、それぐらいの時点のところでは是非今後の、どういうふうに今までとこの成立後とが違うのかどうか、同じなのか、そうしたことを調べたいと思っております。

浅尾 慶一郎

そうした調査に基づきまして、この3年後の見直しに当たっては、そういう調査が行われれば客観的なデータも出るわけでありますから、そのデータを分析した上で見直しを行っていただきたいと思いますが、その点について伺いたいと思います。

坂口 力氏(国務大臣)

今後どういう結果が出るか分かりませんけれども、そうしたことも十分参考にしたいと思っております。

浅尾 慶一郎

時間の関係で少し質問を飛ばさせていただきますが、雇用調整助成金、この点について伺わせていただきますが、この雇用調整助成金の支給対象になる短時間休業について、いわゆるワークシェアリングの促進につながるよう要件が緩和されているわけでありまして、こうした制度には、その趣旨には賛同するわけですけれども、どうも全国で見ても、当該ハローワークによって申請から支給までの時間にばらつきがあるようでありますが、申請から支給まで早いところでどれぐらい、そして最大限掛かってどれぐらい掛かるものなんでしょうか。

森田 次夫氏(大臣政務官)

早いところでは、愛知県が42.1日でございます。それから、遅いところでは、東京が99.6日、約100日でございますね。ちなみに、先生の神奈川では60.9日で、大体平均でございます。

浅尾 慶一郎

大変大事な制度だと思いますし、制度の趣旨に賛成するわけでありますので、是非一番早い例えば愛知県にそろえるようにしていただけると有り難いというふうに思いますが、その点について大臣の御所見、御意見、決意を伺いたいと思います。

坂口 力氏(国務大臣)

できるだけそういうふうに努力をしたいと思っております。

浅尾 慶一郎

では次に、労働基準法に関連する問題としてILO条約の批准の問題についてお伺いいたしますが、まず158号条約、いわゆる使用者発意による雇用の終了に関する条約について伺ってまいります。

この条約は、御案内のとおり、1982年に採択され、解雇の場合の差別や不当な行動の禁止と救済を定めた条約でありますが、この条約が、ILO158号条約が批准できない理由はどこにあるんでしょうか。

矢野 哲朗氏(副大臣)

今御指摘のとおり、使用者の発意による雇用の終了に関する条約でありますけれども、労働者を使用者の発意による雇用の終了から保護することを目的として、労働者の雇用を終了させるに当たっての妥当な理由、そして雇用の終了前又は終了後の手続等について規定した条約であります。

雇用の終了については多様な形態があるわけでありまして、条約が求める措置を一律に実施し得るかどうかということで国内法制等との整合性の問題がまだ残っております。ですから、慎重に対応したいという思いであります。

浅尾 慶一郎

国内法制と整合性を取っていかなければいけないというのは当然のことでありますが、我が国がILO条約、ILOで定めた、採択された条約をまだ批准できていない、幾つもそういう条約あると思いますが、できていないということだとすると大変重要な問題もあるんではないかなというふうに思います。特に、人権を大切にする国であるということを国際社会に示していく上でも必要かなというふうに思いますので、是非国内法制を整備した上で積極的に批准をしていただきたいと考えますが、外務省の考えはいかがでしょうか。

矢野 哲朗氏(副大臣)

浅尾委員御指摘のとおり、ILO条約で今後批准の検討の対象となり得るもの、相当ございます。ですから、ILO条約につきましては、各国の政府、労働者及び使用者の様々な関心を反映されまして、種々の分野を対象としたものが採択をされてきております。

政府としては、それぞれの条約の目的、内容、我が国にとっての意義等を十分検討の上、またその時々の国内のコンセンサス、国際世論等も勘案しまして、批准することが適当と考えるものについては国内法制等との整合性を確保してこれを批准するべきものと考えております。

浅尾 慶一郎

来年の通常国会ではこのILO条約を、幾つもまだ残っているというふうに伺っておりますが、是非少なくとも一本は批准することに全力を挙げていただきたいと思いますが、お約束いただけますでしょうか。

坂口 力氏(国務大臣)

ILO条約につきましては、経済産業の発展の程度、それから労働市場や雇用慣行の実情等様々な、各国の政府、労働者及び使用者のそれぞれの関心を反映をいたしておりまして、種々の分野を対象としたものが採択されてきたところでございます。

我々といたしましても、この労働関係のものあるわけでございますから、外務省とよく御相談をさせていただきまして、少しでも前進できるものは前進をさせたいというふうに思っている次第でございます。

浅尾 慶一郎

少しまだ時間がありますので、先ほど飛ばしました質問に戻らさせていただきますが、有期労働契約の雇止めの場合、雇用保険の退職事由については現行事業主都合というふうになりますけれども、保険の実際の支給期間は自己都合として扱われているという制度のようであります。

雇止めということは、実際は更新を希望しているのに更新してもらえない場合は、やはりこれは保険の方も支給期間も事業主都合というふうにした方がいいんではないかと思いますが、その点についてはいかが考えられますでしょうか。

坂口 力氏(国務大臣)

雇用保険の基本手当につきましては、これは倒産でありますとか解雇等の理由によりまして離職をしました者につきましては、離職者があらかじめ再就職に備えて準備を行うことが難しいことから、この所定給付日数を手厚くしているところでございます。 有期労働契約により雇用されている者については、契約が複数回にわたり反復更新されている場合には次の契約更新に対する期待が生じることから、事業主都合による雇止めについては事業主都合による解雇として取り扱っているところでございます。

これによりまして、御指摘のような契約更新がなされていない場合には契約更新の期待が生じるとは認められないことから、事業主都合による解雇として取り扱うことは困難であるというのが正式な、書いてあることでございますけれども、3年になりますと、3年をもう一遍また延長するといったときにはこれ同じように、同じようにと申しますか、雇用保険の取扱いにつきましては倒産・解雇と同じに扱うということにこれはしたいというふうに思っております。

浅尾 慶一郎

3年あるいは今度5年という有期労働契約ができるといたしますと、3年の者について複数回、2回ぐらい反復継続していればこれは一年の有期労働契約と同じように、今の御答弁は、確認ですが、事業主都合になるという理解でよろしゅうございますね。

坂口 力氏(国務大臣)

そういうふうに理解していただいて結構かと思います。

浅尾 慶一郎

もう一点、現行の一年の場合でもそうでありますが、退職事由については事業主都合となるんですが、保険の支給期間については自己都合として扱われているというケースがあるわけでありまして、これも雇用保険財政の問題とかいろいろあるんだと思いますが、実際は、反復継続で期待も生まれてくるということを考えると、保険の支給期間についても事業主都合となるように検討をしていただきたいと思いますが、その点についてはいかが思われますか。

坂口 力氏(国務大臣)

ちょっとそれじゃ調べさせてください。それで、後で御答弁申し上げます。

浅尾 慶一郎

是非よろしくお願いいたします。

最後に、まだ少し時間がありますので、先ほど伺いました雇用調整助成金について、これの期間が一年以内で延べ休業日数が100日分までという支給期間があるわけでありますけれども、これを延長していただいた方が、現下の経済情勢を考えますと、その方が労働者あるいは使用者双方にとって景気が回復すればまた再びフルで雇うということも考えられるのではないかと思いますが、その点について御検討はいただけないでしょうか。

森田 次夫氏(大臣政務官)

この制度は一時的な雇用調整を行う事業主を支援するという、そういった制度でございます、趣旨でございまして、そういった趣旨にかんがみますと、支給対象期間を1年間、そして支給対象日数が百日間ということで、100日間ということは休み等を除きますと大体5か月分ぐらいに相当すると、こういうことでございまして、これ以上のことについてはちょっと今のところ考えてないと、こういうことでございます。

浅尾 慶一郎

ほぼ時間が参りましたので、最後に、今日の質疑を取りまとめまして、労働契約に関する規制緩和ということが基本的に今回の労働基準法の改正の中身であるわけでありますけれども、これは今日の質疑の中でも大臣の方からも御答弁いただきましたが、労働者の保護という観点も是非とも忘れてはいけないわけでありまして、この法案が通りました後の事後チェック機能の強化が不可欠になってくるんではないかなというふうに思います。

今後の監督行政ということを考えますと、監督官の増員等もその場合には必要になってくるんではないか、社会全体が事後規制という流れの中でアンパイアの数を増やしていくということは大事なことではないかなと思いますが、その点について大臣の御決意を伺いまして、質問を終わります。

坂口 力氏(国務大臣)

この法律が円滑に実施されるようにいたしますためには、今お話しいただきましたように、やはり労働基準監督署の職員というものの数につきましても大事な要素の一つだというふうに思っております。

非常に全体のこの公務員の厳しい中ではございますが、これまでもこの基準監督署につきましてはかなり人数を確保してきたところでございまして、これからもできる限り、ここは大事なところでございますので、確保をしていきたいというふうに思っている次第でございます。

浅尾 慶一郎

終わります。



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