知的障害者及び精神障害者に係る
歯科訪問診療科の算定基準に関する質問主意書
平成14年7月1日

健康保険法及び国民健康保険法に係わる医科及び歯科の診療報酬については、その細目が「健康保険の規定による療養に要する費用の額の算定方法」(平成6年3月16日厚生省告示第54号)に規定されている。

このうち、歯科の訪問診療科については、本年4月1日施行の同告示改正及び本年5月1日付厚生労働省保険局医療科事務連絡「疑義解釈資料の送付について」等において、請求の適正化を図る観点から、対象患者の明確化のための措置が講じられているが、同告示における「通院が困難な患者」の解釈については、文面上なお不明確であり、歯科医療の現場における混乱が予想されている。

特に、知的障害者及び精神障害者については、てんかん重積発作、脳性マヒ、自閉症、視覚障害との重複障害等、疾病そのものの多様性に加え、居宅又は社会福祉施設等における療科の対象となるのか否か、その制度上の位置付けが必ずしも明らかではない。

歯科医師による診療報酬支払請求は、社会保険診療報酬支払基金の審査委員会又は国民健康保険診療報酬審査委員会の審査を受けることとなるが、関係者間において診療報酬の算定基準に解釈の相違があれば、歯科医師は、最終的には民事訴訟を提起しなければならない。

こうした事態は、判例の集積もない中で、真摯に患者の治療に従事する現場の歯科医師に過重な負担となるだけでなく、患者にとっても、到底望ましいことではない。

思うに、内閣は憲法73条により、法律を誠実に施行することを任務とするのであって、法令の規定が不明確な場合には、国民の予測可能性を担保する為、明確な解釈を早急に示す義務がある。

このような観点から、標記について以下質問する。


1. まず、歯科訪問診療科の対象となる「通院が困難な患者」とは、前出の事務連絡によれば、常時寝たきりの状態又はこれに準ずる状態」であることが要件とされている。
しかし、知的障害者及び精神障害者については、療養中の居宅や社会福祉施設等の屋内では、歩行が可能である等必ずしも寝たきりのような状態ではないが、屋外へ出ると精神的な不安定を来たすがために通院が困難な場合がある。
そこで、右の「寝たきりの状態又はこれに順ずる状態」とは、「通院が困難な患者」の要件を限定列挙したものではなく、「通院が困難な患者」の要件を列示列挙したものであって、右の知的障害者及び精神障害者の場合を排除する趣旨ではないと考えるが、かかる解釈に相違ないか、政府の見解を示されたい。

1.についての回答
歯科訪問診医療は、通院が困難な患者の求めに応じて歯科医師が居宅等に赴いて行なう診療を特に評価するものであり、「通院が困難な患者」であるか否かについては、患者の心身の状況に基づいて個別具体的に判断すべきものである。

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2. 次に、前出の事務連絡においては、同じく「通院が困難な患者」の要件として、「疾病、傷病のため通院による歯科治療が困難」であることが挙げられている。
ところが、知的障害者及び精神障害者については、歯科医院まで通ってくることは出来るが、待合室等で精神の不安定を来たすため、治療が困難である場合がある。
そこで、「通院による歯科治療が困難」とは、歯科医院まで来ることは出来ても当該歯科医院内における歯科治療が困難である場合を含み、右の知的障害者及び精神障害者の場合を排除する趣旨ではないと考えるが、かかる解釈に相違ないか、政府の見解を示されたい。

2.についての回答
事務連絡にいう「疾患、傷病のため通院による歯科治療が困難な者」には、ご指摘のような場合の知的障害者及び精神障害者も該当し得るものと考えている。

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3. さらに、本年6月18日付政府答弁書(内閣参質154第22号)によれば、「個々の患者が歯科訪問診科の算定要件に合致するか否かについては、歯科医師が各患者の心身の状況に基づいて判断することとなる」とされている。
そこで、「心身の状況に基づいて」とは、歯科訪問診療の対象となる患者には、通院が困難な患者であれば、知的障害者及び精神障害者も当然含まれる趣旨と考えるが、かかる解釈に相違ないか、政府の見解を示されたい。
また、「心身の状況に基づいて」とは、介助人や患者輸送のための車が手配できない等の社会的経済的状況により通院が困難な場合も含む趣旨と考えるが、かかる解釈に相違ないか、政府の見解を示されたい。

3.についての回答
知的障害者及び精神障害者も「通院が困難な者」に該当する場合があるが、個々の知的障害者又は精神障害者を含め、個々の患者がこれに該当するか否かについては、当該患者の心身の状況のみに基づき判断すべきものと考えている。

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4. 最後に、知的障害者及び精神障害者の歯科治療については、障害者福祉の増進に資するだけでなく、症状進行を食い止め、又は改善するという重要な意義を有するにもかかわらず、保険者等の関係者に、その治療の実態に関する理解が不足しているがために、診療報酬請求の場面において誤解を招く場合場合がある。
そこで、歯科訪問診療については、知的障害者及び精神障害の制度上の位置づけについて、1.ないし3.の解釈を明確にした上で、関係者に然るべく通知すべきものと考えるが、政府の見解を示されたい。

4.についての回答
知的障害者及び精神障害者が歯科訪問診医療の対象となりえることを含む歯科訪問診療科の内容については、説明会の開催、事務連絡の発出等を通じて、保健医療機関等に十分周知したところである。

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