我が国公的年金制度の在り方に関する質問主意書
平成16年5月27日

小泉構造改革の一環として政府が提出した国民年金法等の一部を改正する法律案(以下「法案」という。)は、取りやすい所から取るという現行公的年金制度が抱える不公平極まりない矛盾点の改善に何ら手を着けることなく、保険料の引上げと給付の削減という負担ばかりを国民に求めるものであり、保険料流用の問題の発覚ともあいまって、国民の公的年金制度に対する不信感は究極の高まりを見せている。

公的年金制度は、憲法第25条第1項により国民に権利として付与された生存権を保障するため、同条第2項により政府が整備する義務を負うものであり、他方、内閣は憲法第73条第1号により、法律を誠実に執行する義務も負う。かかる憲法の趣旨にかんがみれば、政府は、公的年金制度の改正に当たっては、国民に対して十分な説明責任を果たすとともに、その理解を得るためにたゆまざる努力をなすことが義務付けられているものと考える。

このような観点から、標記について以下質問する。


1. 厚生労働省の「厚生年金・国民年金数理レポート-1999年財政再計算結果−」では、厚生年金のバランスシートが過去拠出対応部分と将来拠出対応部分に分けて掲載されている。また、財務省・財政事情の説明手法に関する勉強会における「国の貸借対照表(試案)」には、国民年金、公務員の共済年金等について同様のバランスシートが示されている。法案の提出に当たり、このようなバランスシートを示さないのはなぜか。

1.についての回答
公的年金制度は、世代間扶養の考え方に基づく賦課方式を基本とした財政運営を行っていることから、定期的に将来の収支見通しを作成することによって財政の健全性を確認している。御指摘の資料は、この収支見通しを基に将来の収入や支出を現時点の価値に換算して作成したものにすぎず、公的年金制度の財政を運営していく上で必須のものではない。第159回国会に国民年金法等の一部を改正する法律案(以下「法案」という。)を提出するに当たっては、法案の内容に沿って収支見通しを作成し、その内容が長期的に収支の均衡がとれたものであることを明らかにしたところである。なお、法案の内容を踏まえた厚生年金及び国民年金に係るお尋ねのような資料については、将来の保険料水準をあらかじめ定める方式が導入され、収支を均衡させる期間(以下「財政均衡期間」という。)が将来にわたる全期間から有限の期間に変更されることに伴って、その作成の考え方を整理しつつ作業を進め、これを平成16年4月22日に公表したところである。

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2. 他方、法案の提出に当たり、政府は有限均衡方式(財政均衡期間を95年とする)を採用し各種変数を用いて財政収支を見通している。そこで、同様の期間及び変数を用いた場合、厚生年金、国民年金、各共済年金のそれぞれ及び公的年金全体について、過去拠出対応部分と将来拠出対応部分に分けた2種類のバランスシート(一で引用した資料に示されたものと同様に、資産(国庫負担及び保険料収入又は積立金額)及び負債(給付債務)並びに債務超過額又は資産超過額等が一覧できるもの)を次の場合分けに従って各々示されたい。なお、金額は現在時点で一時金換算した金額とされたい。
  1. 国民年金の国庫負担率を1/3に据え置くとともに、保険料及び給付についても現行水準に据え置いた場合
  2. 国民年金の国庫負担率を今後政府計画どおりに1/2まで引き上げた場合(他の条件は1と同じとする。)
  3. 法案による所要の改正を施した場合

2.についての回答
世代間扶養の考え方に基づく賦課方式を基本とした公的年金制度においては、過去の保険料拠出に対応する給付を現時点の価値に換算した額に相当する積立金を保有せず、これを今後の保険料収入等によって賄う財政方式を採用している。したがって、今後拠出される保険料の収入等で過去の保険料拠出に対応する給付と将来の保険料拠出に対応する財政均衡期間内の給付を賄うものであることから、今後拠出される保険料の収入等の財源をお尋ねのように過去の保険料拠出に対応する給付に充てられるべき部分と将来の保険料拠出に対応する給付に充てられるべき部分に分けた形で示すことは適当ではないと考えている。

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3. 右のバランスシートを用いた分析によると、今回の法案による制度改正の趣旨は過去拠出対応部分の債務超過を将来拠出対応部分の資産超過でまかなう構図となっているものと思われる。かかる年金制度は、少なくとも今後引き上げられる部分の保険料については拠出と給付が結び付いていない制度になると考えるが、政府の見解はどうか。

3.についての回答
世代間扶養の考え方に基づく賦課方式を基本とした公的年金制度においては、過去の保険料拠出に対応する給付を現時点の価値に換算した額に相当する積立金を保有せず、これを今後の保険料の収入等によって賄う財政方式を採用している。したがって、お尋ねの趣旨が、過去の保険料拠出に対応した給付を現時点の価値に換算した額と現に保有する積立金との差額を、今後拠出される保険料の収入等で賄うということを意味するのであれば、それは賦課方式での財政運営を行う限り、当然の帰結である。
なお、公的年金制度における拠出と給付の結び付きは、保険料を納付したことが記録され、老齢等あらかじめ設定した保険給付の要件を満たしたときに、記録された保険料納付実績が根拠となって年金受給権が発生することを意味するものであり、この点に関しては、制度発足以来変わりはなく、今後保険料を引き上げても変わるものではない。

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4. 拠出と給付が結び付かない保険料は税金と変わらないと考えられる。そこで、仮に今回の制度改正を国民年金国庫負担の引上げのみにとどめ、過去拠出対応部分の債務超過額を区分経理し、それを今後九十五年掛けて消費税の引上げでまかなうとすると、その税率は何%引き上げる必要があるか。

4.についての回答
過去の保険料拠出に対応する給付は将来の保険料の収入等によって賄うので、過去の保険料拠出に対応する給付を現時点の価値に換算した額と現に保有する積立金との差額を債務超過とはとらえていないが、これを債務超過と仮定し、消費税で賄うこととしてそれに必要な税率を試算するとしても、財政均衡期間である今後おおむね100年間における消費税収の推移については予測することが困難であり、その税率を算出することはできない。

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5. 法案提出の際の財政収支見通しでは、国立社会保障・人口問題研究所平成14年1月推計(中位推計)に基づき、出生率が1.39に回復することを前提としている。
  1. 出生率低下は平均初婚年齢の上昇が大きく寄与するが、この人口推計(中位推計)では、平均初婚年齢の上昇が27.8歳で上げ止まると推定している。かかる推定に至った理由は何か。
  2. 政府は、政策的な対応で出生率を1.39に回復させる旨の答弁を国会で行っているが、平均初婚年齢の上昇の原因を、どのような調査の実施等により、どのように把握しているか。また、政府が今後推進する政策は、どのような理由で、平均初婚年齢の上昇を食い止めることに資するのか。

5.-1についての回答
国立社会保障・人口問題研究所が取りまとめた「日本の将来推計人口(平成14年1月推計)」においては、統計調査により把握された結婚や出生に関する実態に基づいて、同じ出生年の世代ごとに将来のその世代の結婚の時期、未婚の状況、結婚後の出産の状況等を推定し、人口推計を行っているが、そのうち、昭和60年より後に生まれた世代の平均初婚年齢については、その推定の前提となる結婚に関する実態がないことから、中位推計においては、昭和60年生まれの世代の平均初婚年齢の推定値である27.8歳を基準として推定している。

5.-2についての回答
平均初婚年齢が上昇している原因は必ずしも明らかではないが、国立社会保障・人口問題研究所が5年に一度行ってきた出生動向基本調査によると、25歳から34歳までの男女に独身でいる理由として「適当な相手にまだめぐり会わないから」及び「結婚する必要性をまだ感じないから」という回答が多くなっている。人口推計に当たっては、同調査において、結婚しようとする意思を有する未婚者のうち、「ある程度の年齢までには結婚するつもり」と考える者が近年減少傾向にあること等から、しばらくの間、平均初婚年齢の上昇が続くものと考えている。
合計特殊出生率の低下については、平均初婚年齢の上昇による影響のほかに、未婚者の増加及び結婚した夫婦からの平均的な出生数の低下といった様々な要因が考えられることから、結婚や出産をためらわせる障壁を極力取り除き、子育ての不安や負担を軽減する観点等からの総合的な対策を進める必要があると考えている。このため、従来から進めてきた子育てと仕事の両立支援の施策に加え、男性を含めた働き方の見直し、地域における子育て支援の充実、子どもの社会性の向上や自立の促進等を図る施策についても、改めて政府、地方公共団体、企業等が一体となった取組を進めることとしている。

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6. 法案によるマクロ経済スライドについて、被保険者数の減少が政府予測(年率0.6%)を上回ると、毎年のスライド調整率が大きくなり、より急激に給付の削減が進む。また、名目上の被保険者数の減少が予測どおりでも、実質的な保険料収入の減少が起きれば、積立金の取崩しを通じて将来における年金給付水準の切下げが避けられないことになる。
  1. 被保険者数の減少予測は出生率の動向と労働力率を加味して行われているが、失業率は加味していない。これは、第二号被保険者が失業すると全員が第一号被保険者となるからとの説明を事務当局から受けている。
    そこで、まず、第二号被保険者が失業した場合、国民年金に加入しない者の割合(実績値)を把握しているか。把握しているとすれば、その数値を明らかにされたい。
  2. 仮に、失業した第二号被保険者が全員第一号被保険者となるにしても、失業者は保険料を支払えない場合も多く、少なくとも厚生年金の報酬比例部分の保険料収入は全体として減ることが予想される。実際、去る5月20日の参議院厚生労働委員会における政府答弁でも、失業により75万人の第二号被保険者が第一号被保険者に移動すると、2025年における所得代替率が49.7%になるとしている。この答弁は、失業者が増えてもマクロ経済スライドの調整率に影響しないという事務当局の説明と矛盾しないか。
  3. 政府は、失業の動向も加味してマクロ経済スライドの変数として用いる被保険者数、保険料、給付水準等の推計をやり直すべきではないか。

6.-1についての回答
20歳以上60歳未満の国民年金の第二号被保険者(国民年金法(昭和34年法律第141号。以下「法」という。)第7条第1項第2号に規定する第二号被保険者をいう。以下同じ。)が失業した場合、第一号被保険者(同項第一号に規定する第一号被保険者をいう。以下同じ。)又は第三号被保険者(同項第三号に規定する第三号被保険者をいう。)への種別の変更の届出(法第12条第1項に規定する届出をいう。以下同じ。)を行う必要があるが、法第5条第1項に規定する被用者年金各法の被保険者、組合員又は加入者である第二号被保険者が当該被保険者、組合員又は加入者としての資格を喪失した場合において、その理由が失業によるものかどうかを把握していないため、失業により種別の変更の届出を行うべき者のうち被保険者の種別の変更の届出を行っていないものの割合は把握していない。

6.-2についての回答
御指摘の事務当局の説明(以下「事務当局の説明」という。)は、失業者が増加し第二号被保険者数が減少しても、第一号被保険者が増加すること等から公的年金被保険者全体の数に変化を及ぼすものではなく、したがって公的年金被保険者数の減少率を基礎として設定される毎年の調整率にはほとんど変化がないことを説明したものである。しかしながら、失業者が増加することによって、厚生年金の保険料収入が減少することから、標準的な前提を置いた場合の収支見通しと比べて、財政の均衡を図るためにより長期間の調整を必要とするため、最終的な所得代替率が低下することとなる。
したがって、所得代替率が低下するという御指摘の答弁は、事務当局の説明と矛盾するものではない。

6.-3についての回答
厚生年金や国民年金における被保険者数等の将来見通しについては、性別及び年齢別の人口、労働力率及び労働力人口に占める被用者の割合の見通しに基づいて被保険者数の推計を行っており、直接失業率を推計に用いていないが、直近の被保険者数等を推計に反映させることを通じて、最近の雇用動向は間接的に反映されていると考えている。

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7. 同じく、5月20日の厚生労働委員会において政府は、郵政公社民営化に際しての年金給付債務の扱いについて、「国家公務員全体として考えなければならない」旨、また、いわゆる職域加算の部分は「厚生年金には持ち込まない」旨答弁している。
  1. 答弁は、郵政公社職員に係る年金給付債務を、民営化時以降は厚生年金に付け替えることなく、国家公務員共済組合で支払う趣旨と思われるが、相違ないか。
  2. 答弁は、郵政公社職員に係る職域加算の部分は、民営化とともに廃止するという趣旨と考えるが、相違ないか。
  3. 当方が考える趣旨と政府見解が異なる場合、郵政公社職員に係る年金の給付債務は、だれがどのように負担していくのか。

7.-1についての回答
御指摘の答弁は、日本郵政公社の役職員や退職者に適用される年金制度の在り方については、公的年金制度全体の中での共済年金制度の在り方をも見据えながら検討していかなければならないという認識を示したものであり、日本郵政公社の役職員や退職者に係る年金給付を、国家公務員共済組合の負担のみにより賄うといったことを意味するものではない。

7.-2についての回答
御指摘の答弁は、日本郵政公社の役職員や退職者に係る職域加算部分について、厚生年金制度の中には存在しない制度であり今後ともその中に設けることは考えていないという認識を示したものであり、日本郵政公社の役職員や退職者に係る職域加算部分を廃止するといったことを意味するものではない。

7.-3についての回答
日本郵政公社の役職員や退職者に適用される年金制度の在り方については、日本郵政公社の民営化に向けた今後の作業の動向等も踏まえつつ、公的年金制度全体の中での共済年金制度の在り方をも見据えながら検討していかなければならない問題であると考えており、これらの者に係る年金給付の費用負担についても、この年金制度の在り方についての議論の中で検討していく問題であると考えている。

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